年金制度と年金機構を考える研究サイト

大きく、次の三つのテーマを設定しました。

1)年金制度の思想的考察

<解説>私の研究者としての関心は、ハイエクの自由主義思想と経済制度設計の関係から始まりました。現在の研究課題は、『自由の条件』第3巻で展開されるいわゆる「福祉国家批判」で、具体的には労働組合批判(と反トラスト法の関係)です。その第2弾として年金制度批判を取り上げることとしました。彼の社会保障制度はノモスの法の議論にも関わるもので、法学的、経済学的、そして哲学的議論が錯綜する、ハイエク研究における難題の一つになっています。

2)日本年金機構(旧社会保険庁)の入札不正

<解説>旧社会保険庁(現日本年金機構)を舞台とした平成初期の「シール談合事件」は独禁法の教科書に出てくる判例として10本の指に入るだろう重要判例です。機構はいわば被害者の立場なのですが、組織のコンプライアンスの重要テーマの一つは、避けることができる被害の発生と拡大を防止することであります。機構は過去の教訓を生かすべき立場にありましたが、機構発注の業務で再び談合事件が起こり、2022年3月、公取委が印刷業者に対して行政処分を下しました。その際、発注者である機構に被害の発生と拡大を防止することを怠ったことを指摘し改善要求をしました。過去にも機構はその職員自らが加害者となる官製談合防止法違反を犯したこともあり、コンプラアインスには細心の注意を払っていると思っていたのですが残念です(この官製談合防止法違反事件については、私は機構が設置した第三者検証委員会のメンバーでした)。この談合事件をきっかけに機構に関連する入札不正についてまとめと考察を行うこととしました。

3)岸田内閣の「新しい資本主義」の考察

<解説>岸田内閣は福祉国家的色彩の強い「新しい資本主義」の制度設計を目指しています。その際、年金制度を含めた社会保障制度はメインテーマの一つになりますが、その前提として成長と分配を同時実現する思想的基盤が問題になります。そして具体的制度設計は如何なるものか、詰めて考える必要があります。その他にも公共契約における賃金引き上げの総合評価制度での評価等の仕組み作りが進んでいますが、インセンティブ設計として合理的なのか、いろいろ意見があるようです。そうした岸田内閣の「新しい資本主義」政策を批判的に考察することとします。