「1勝9敗」

柳井正さんの著書のタイトルだが、私はいいフレーズだと思う。私の人生もこんな感じだが、柳井さんの場合は狙ってこの結果で、私は無謀に挑んでの1勝9敗だ。前者の方が、賢い。彼の場合、1勝で9敗分の何十倍、何百倍も取り戻せるので、それでいいのだ。躊躇せず挑むことに商機があり、勝機がある。

「10勝0敗」。これが日本のエリートのスタイルだ。中学受験も大学受験も資格試験も、何もかも失敗せずにやってきた。世間が「よい」「すごい」と認める基準を全てクリアすることで自分のアイデンティティを形成する。それを親が子供に求める。結局は、ペーパーテストのような「形式」を満たすだけのゲームになってしまっている。

次の時代を切り拓くイノベーターが日本からあまり出てこないのは、そういう「形式」への拘りが強過ぎるという背景があるのではないか。

「お受験」。私には縁遠い言葉だが、仮に幼少期の「お受験」を通過さえすれば、その後の「形式」主義の弊害を回避できるのであれば、それはよいことなのかもしれない。しかし、そうはなっていないだろうが。